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100kWhか200kWhか。「容量を2倍にしても価格は1.3倍」の理由と、容量選びで本当に見るべき数字

低圧蓄電所
【訂正】2026年10月16日

公開時、電気主任技術者の選任と保安規程の届出を高圧のみの要件であるかのように記載していました。これらは低圧の系統用蓄電所でも必要です。該当箇所を修正しました。お詫びして訂正いたします。

「低圧」を決めているのは、容量(kWh)ではなく出力(kW)です

物件をご案内していて、最初によくご質問をいただくのがここです。「200kWhもあるのに低圧なんですか」と。

低圧・高圧の区分を決めているのは、系統に連系する出力(kW)です。蓄電池に何kWhためられるかは、区分には関係しません。パワーコンディショナ(PCS)の出力が50kW未満であれば、容量が100kWhでも200kWhでも低圧として扱われます。

この違いは、費用にもそのまま出てきます。50kW以上の高圧になると、キュービクル(受変電設備)の設置と保守が加わり、初期費用も維持費も一段上がります。なお電気主任技術者の選任と保安規程の届出は、低圧の系統用蓄電所でも必要です。低圧の上限ぎりぎり、49.5kWや49.9kWという出力で設計されている物件が多いのは、高圧にかかる固定費を負わずに、容量だけを確保するためです。

まず押さえる1点
  • 低圧/高圧の分かれ目は「連系出力50kW」。容量(kWh)ではない
  • だから「低圧=小さい設備」ではない。49.9kWのまま200kWh級を積むことができる
  • 高圧になるとキュービクル・主任技術者の選任などが加わり、固定費の階段が一段上がる

容量を2倍にしても、総額は約1.3倍にしかならない

ここが、容量選びでいちばん誤解されやすいところです。「容量が2倍なら値段も2倍」と思われがちですが、実際の相場はそうなっていません。

低圧の系統用蓄電所の初期費用は、同じ49.5kW級でおおむね次のような水準です(土地代・系統連系工事負担金を除く、税抜の目安)。

容量別・初期費用の目安(税抜/土地代・負担金は別)
  • 49.5kW × 100kWh ── 約1,800万〜2,200万円(kWh単価 約18〜22万円)
  • 49.5kW × 200kWh ── 約2,300万〜2,700万円(kWh単価 約11.5〜13.5万円)
  • 容量は2倍、総額は約1.3倍。kWh単価はおよそ4割下がる

理由は費用の構成にあります。蓄電所の費用のうち、容量に比例して増えるのはバッテリーモジュールそのものだけです。PCS、変圧器、基礎工事、造成、フェンス、系統連系の申請手続き、設計費、遠隔監視の設備──これらは容量が100kWhでも200kWhでも、ほぼ同じだけかかります。

言い換えれば、低圧蓄電所の初期費用の半分近くは「容量とは関係のない固定費」です。だから容量を増やすと、その固定費を分け合う母数が増えて、kWh単価が下がっていきます。

では大きいほど有利なのか。決めるのは「放電できる時間」です

kWh単価だけを見れば、容量は大きいほど有利です。しかし収益の側から見ると、話はそう単純ではありません。容量を2倍にしても、収益が2倍になるわけではないからです。

鍵になるのは、放電に何時間かかるかです。出力49.9kWのまま容量を増やすと、放電にかかる時間が伸びていきます。

出力49.9kW一定で、満充電から放電しきるまでの時間
  • 100kWh ── 約2時間
  • 200kWh ── 約4時間
  • ※実際にはロスや運用上の余裕を見込むため、これより短くなります

この「何時間放電できるか」が、そのまま使える市場の幅を決めます。

JEPXアービトラージ(安い時間に充電し、高い時間に放電する)で言えば、1日のうち価格が高くつく時間帯は限られています。夕方の数時間に価格が立つ日、200kWhを4時間かけて放電すると、後半は価格が下がった時間にかかることもあります。つまり、容量の後半部分は前半ほど高く売れない可能性があるということです。

一方の需給調整市場では、容量が足りないと入口に立てません。この市場の商品には「指令を受けてから何時間、その出力を出し続けられるか」という継続時間の要件があります。100kWhで約2時間しか持たない設備では、満たせる商品が限られます。容量は、収益を増やすためというより、参加できる市場を確保するために必要という性格が強いのです。

容量市場についても同じで、供給力として評価されるには一定時間の持続が求められます。複数の市場を組み合わせて収益を重ねる(レベニュースタッキング)という考え方が成り立つかどうかは、この継続時間で決まります。

ここまでを踏まえると、低圧で49.9kW級を選ぶ場合、200kWh前後という容量は、kWh単価と継続時間の両方でバランスが取りやすい水準ということになります。当社が取り扱う物件も、この設計を基本にご案内しています。

2027年10月、機器選びに新しい条件が加わる見込みです

容量や出力とは別に、これから機器を選ぶ方に関係してくる話をひとつ添えておきます。

IoT機器のセキュリティ適合性評価制度、通称JC-STARです。系統連系の技術要件として、PCSやEMSなどIP通信を使う制御機器にJC-STAR★1の取得を求める方向で、制度の改定が進んでいます。適用時期は特別高圧・高圧が2027年4月、低圧50kW未満が2027年10月という案が示されています。蓄電池本体やBMS単体は対象外とされています。

注意していただきたいのは起点です。実際に連系した日ではなく、系統アクセスの契約申込みの時点が基準になる方向で明文化が進んでいます。契約申込みから連系までに1年以上かかることは珍しくありませんので、2027年10月という日付は「そのころ動く人の話」ではなく、今から機器を選ぶ人にも関わってくる話だとご理解ください。

ただし条文はまだ公布されておらず、経過措置についても調整が続いています。当社としては、ご案内する物件の機器がこの要件にどう対応する見込みかを、そのつど確認してお伝えするようにしています。現時点の確定情報ではない点は、あらかじめ申し添えます。

容量の話は、単価だけでは終わりません

整理します。容量を増やすとkWh単価は確実に下がります。ここは相場としてはっきりしています。しかし収益は、増えた容量を「売れる時間帯に売り切れるか」「必要な継続時間を満たして市場に入れるか」で決まります。この二つを同時に見ないと、容量選びは単価の比較で終わってしまいます。

当社では、物件の出力・容量に加えて、想定する市場の組み合わせと運用パターンまで置いたうえで、ネガティブ/スタンダード/ポジティブの3シナリオで数字をお出ししています。前提を明示していますので、「この数字はどこから来ているのか」をご自身で検証していただけます。

掲載中の物件は販売物件一覧からご覧いただけます。非公開の物件もございますので、ご希望の条件があればお気軽にお問い合わせください。

※本記事の初期費用は、当社が把握している市場相場の目安であり、個別物件の価格を示すものではありません。土地代・系統連系工事負担金は含みません。※JC-STARに関する適用時期・対象範囲は改定案に基づくもので、正式な条文は公布されていません。※収益性は市場価格・運用方針・アグリゲーターとの契約条件により変動します。※本記事の内容は掲載時点の情報に基づきます。制度・市場環境は変更される場合があります。

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