ブログ

「低圧なら電気主任技術者は不要」は誤りです。当社の記事を訂正し、法令の根拠から整理します

運用・実務

まず、当社の記事を訂正します

10月8日に公開したランニングコストの記事で、「低圧(50kW未満)では電気主任技術者の選任が不要です」と書きました。これは誤りでした。

系統用蓄電所は、低圧で連系する場合でも電気主任技術者の選任と保安規程の届出が必要です。該当記事は訂正済みですが、費用の話として重要な部分だったので、今回あらためて1本の記事にします。誤った情報をお伝えしたことをお詫びいたします。

あわせてお伝えすると、この誤解は当社だけのものではありません。業界内の解説記事でも「低圧なら不要」と書かれているものを複数見かけます。太陽光発電の感覚をそのまま蓄電所に当てはめると、ここで間違えます。なぜそうなるのかを、条文から順に見ていきます。

一般用電気工作物とは何か

電気事業法では、設備が「一般用電気工作物」にあたるなら、主任技術者の選任も保安規程の届出も要りません。ご家庭の分電盤に保安規程がないのはこのためです。

では一般用電気工作物とは何か。法第38条第1項は、おおまかに次の二つを挙げています。

一般用電気工作物にあたるもの(法第38条第1項)
  • ① 電気を使用するための電気工作物
  • ② 小規模発電設備(施行規則第48条が種類と規模を列挙)

ポイントは②です。小規模発電設備として列挙されているのは、太陽電池・風力・水力・内燃力・燃料電池・スターリングエンジンの6種類。この中に蓄電池はありません。

系統用蓄電所は、そのどちらでもない

ここが核心です。系統用蓄電所を①②に当てはめてみます。

①には当てはまりません。系統用蓄電所は、系統から電気を受け取り、系統へ送り出す設備です。構内で電気を消費することが目的の設備ではありません。工場やビルに置く自家消費用の蓄電池とは、ここが決定的に違います。

②にも当てはまりません。先ほどの6種類に蓄電池が入っていないからです。蓄電池は発電するわけではないので、そもそも「発電設備」の枠に入りません。

一般用電気工作物でないものは「事業用電気工作物」です(法第38条第2項)。そして事業用電気工作物には、技術基準への適合維持義務に加えて、主任技術者の選任(法第43条)と保安規程の届出(法第42条)が課されます。

なぜ低圧でも必要になるのか
  • 系統用蓄電所は「電気を使用するための設備」ではない
  • 施行規則第48条の小規模発電設備6種類に蓄電池は含まれない
  • したがって一般用電気工作物に該当せず、事業用(自家用)電気工作物になる
  • 連系出力が49.5kWでも、主任技術者の選任と保安規程の届出が必要

もう一つ、誤解を生みやすい制度があります。2023年の制度改正で新設された「小規模事業用電気工作物」という区分です(法第38条第3項)。これは主任技術者の選任までは求めず、基礎情報の届出などで足りるという区分なのですが、対象は太陽光10kW以上50kW未満と風力20kW未満の限定列挙です。蓄電池は入っていません。

「50kW未満なら緩い区分があったはずだ」という記憶は、太陽光の話です。蓄電所には適用されません。

では、どう対応するのか

ここまで読むと負担が重そうに聞こえるかもしれませんが、実務上は外部委託承認制度という逃げ道が用意されています。自社で有資格者を雇う必要はありません。

外部委託承認制度のあらまし
  • 対象──出力5,000kW未満かつ7,000V以下で連系する設備。低圧の蓄電所は余裕で枠内です
  • 手続き──要件を満たす保安管理業務の受託者と契約し、所轄の産業保安監督部長の承認を受けます
  • 費用の目安──年24万〜36万円程度。契約先・設備構成・点検内容により幅があります
  • 20年でみると、累計500万〜700万円規模の費用になります

保安規程も届け出が必要です。巡視・点検・測定の頻度を定め、記録を残すことになります。実際の点検は委託先が行いますが、届出の名義も記録の保存責任もオーナー様にあります。

もう一点、2025年11月20日施行の電気関係報告規則の改正により、容量20kWhを超える電力貯蔵装置は事故報告の対象になりました。200kWh級の蓄電所は当然これに該当します。

検討中の物件の収支に、この費用は入っていますか

実務的にいちばんお伝えしたいのはここです。

年24万〜36万円は、低圧蓄電所の年間ランニングコスト全体のうち、決して小さくない割合を占めます。この費用が収支計画に入っているかどうかで、提示される利回りは1ポイント前後変わります。20年なら500万円以上の差です。

他社の提案書をお持ちの方は、ランニングコストの内訳をご確認ください。保安管理費、電気主任技術者、保安業務委託費──呼び方はさまざまですが、この項目が立っていなければ、その計画は実際より良く見えています。

提案書で確認したい3点
  • ランニングコストに保安管理費(主任技術者の外部委託費)の項目があるか
  • 保安規程の届出を誰が行うことになっているか
  • 年次の点検記録を誰が保存するのか

当社は、この費用を年30万円として収支に織り込んだうえで3シナリオをお出ししています。外部委託先のご紹介も行います。費用を隠して利回りを良く見せるより、最初から入れておくほうが、結果としてお客様の判断の役に立つと考えているからです。

間違えたときに、どうするか

最後に、今回の訂正について一言だけ。

当社はこのブログで「良い数字だけを見せる提案はしません」と書いてきました。であれば、自分の記事の誤りを黙って直すのは筋が通りません。だから訂正を記事にしました。

制度が毎週のように動いている分野です。今後も間違えることはあると思います。そのときは、同じように訂正してお知らせします。間違えないことより、間違いを放置しないことのほうが大事だと考えています。

掲載中の物件は販売物件一覧からご覧いただけます。他社でご検討中の提案書について、費用の抜けがないか第三者の目で確認してほしいというご相談も承っています。

※本記事は電気事業法および同施行規則の規定に基づいて整理したものですが、個別の設備が事業用電気工作物に該当するか、外部委託承認の対象となるかの判断は、設備構成により異なります。所轄の産業保安監督部または保安管理業務の受託事業者にご確認ください。※費用の目安は当社が把握している相場であり、個別の契約条件を示すものではありません。※本記事の内容は掲載時点の情報に基づきます。制度は変更される場合があります。

提案書の費用に、抜けがないか確認しませんか

保安管理費・PCS交換・撤去費用まで織り込んだ3シナリオの収益シミュレーションを、無料で作成しています。

無料シミュレーションを依頼する