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収入の話の裏で、毎年いくら出ていくのか。低圧蓄電所のランニングコストを項目ごとに洗い出す

運用・実務
【訂正】2026年10月16日

公開時の本記事に誤りがありました。「低圧(50kW未満)では電気主任技術者の選任が不要」と記載していましたが、これは誤りです。系統用蓄電所は低圧で連系する場合でも、電気主任技術者の選任と保安規程の届出が必要です。該当箇所を修正し、年間費用の水準もあわせて見直しました。なぜ低圧でも必要なのかは、10月22日の記事で法令の条文から解説しています。誤った情報をお伝えしたことをお詫びいたします。

「利回り」は、分子と分母の両方を確かめないと意味がない

お問い合わせをいただいて数字のご説明をするとき、ご質問が集まるのはたいてい売上の側です。需給調整市場でいくら、JEPXの価格差でいくら、と。当然のことだと思います。

ただ、お客様の口座に残るのは売上ではなく、そこから毎年の費用を引いた後の金額です。利回りという一つの数字は、売上の見込みと費用の見込みという二つの推定を掛け合わせて出てきます。片方だけ精度を上げても、答えの精度は上がりません。

今回は、低圧の系統用蓄電所を20年保有するとして、毎年どんな費用が出ていくのかを項目ごとに洗い出します。当社がシミュレーションに織り込んでいる考え方も、あわせてお伝えします。

毎年かかる費用を、7つに分けて見る

低圧(49.5kW前後・100〜200kWh級)を前提に、年間の主な費用を並べます。金額は当社が把握している相場の目安で、契約先や設備構成によって幅があります。

年間ランニングコストの主な項目と目安
  • ① アグリゲーター手数料──収益の10〜30%(中央値は12%前後)。「売上の8%+年額30万円」のように固定費と組み合わせる料金体系を公開している事業者もあります
  • ② 充電電力費──市場から電気を買う費用。託送料金・再エネ賦課金を含み、年20万円前後から
  • ③ 待機電力・所内電力──設備自体が消費する電気。年15〜20万円程度
  • ④ O&M・遠隔監視・保険・通信──定期点検、監視システム、火災・賠償保険、通信回線をまとめて年30〜55万円程度
  • ⑤ 固定資産税(償却資産)──評価額×1.4%。初年度が最も高く、年々下がっていきます
  • ⑥ 土地の費用──賃借なら年間の賃料。自己所有の土地を使う場合はゼロ
  • ⑦ 電気主任技術者の保安管理費──外部委託で年24〜36万円程度。低圧の蓄電所でも必要です(理由は後述します)

土地とアグリゲーター手数料を除くと、年間100万〜150万円程度に収まることが多いというのが、おおまかな感覚です。手数料は収益連動なので、売上が伸びれば増え、落ちれば減ります。つまり固定費ではありません。ここは計画を立てるうえで大事な性質です。

①について一点だけ補足します。手数料率そのものよりも、どの市場に入れてくれるかのほうが手取りに効きます。手数料15%でも複数市場を組み合わせて収益を重ねてくれる事業者と、手数料10%でJEPXの価格差だけを狙う事業者では、差し引き後の金額が逆転することがあります。アグリゲーターの選び方については以前の記事でも整理しています。

低圧でも、電気主任技術者は必要です

ここは誤解が広く流通しているところです。当社もこの記事の公開時に誤った説明をしていました。改めて、法令の条文から整理します。

電気事業法では、「一般用電気工作物」にあたる設備であれば主任技術者の選任は要りません。一般用電気工作物とは、おおまかに言えば①電気を使用するための電気工作物か②小規模発電設備です(法第38条第1項)。

系統用蓄電所は、このどちらにも当てはまりません。系統から電気を受け取って系統へ送り出す設備なので①の「電気を使用するための設備」ではなく、施行規則第48条が列挙する小規模発電設備(太陽電池・風力・水力・内燃力・燃料電池・スターリングエンジン)にも、蓄電池は入っていないからです。

その結果、連系出力が49.5kWであっても事業用電気工作物(自家用電気工作物)として扱われ、電気主任技術者の選任(法第43条)と保安規程の届出(法第42条)が必要になります。2023年に新設された「小規模事業用電気工作物」という区分も、太陽光10〜50kWと風力20kW未満の限定列挙で、蓄電池は対象外です。

低圧でも必要なもの/高圧で追加されるもの
  • 電気主任技術者の選任──低圧でも必要。外部委託承認制度が使えるので年24〜36万円程度
  • 保安規程の届出──低圧でも必要
  • キュービクル(受変電設備)──低圧は不要。ここが高圧との明確な差です
  • 工事計画の届出・使用前安全管理検査──出力1万kW未満かつ容量8万kWh未満であれば不要

外部委託承認制度は、出力5,000kW未満かつ7,000V以下で連系する設備であれば利用できます。所轄の産業保安監督部長の承認が必要ですが、自社で有資格者を抱える必要はありません。低圧の蓄電所であれば、この制度の枠内に収まります。

「低圧のほうが利回りが出やすい」という言い方を見かけますが、その理由は主任技術者が不要だからではありません。キュービクルが不要であること、投資規模が小さく土地の選択肢が広いこと。低圧の強みはそちらです。保安管理費は、低圧でも必ず計算に入れてください。

20年のうちに一度だけ来る、大きな支出

毎年の費用とは別に、途中で一度だけ発生する支出があります。ここを計画に入れていないシミュレーションは、後半で合わなくなります。

単年度に発生する大きな支出
  • PCS(パワーコンディショナ)の交換──12〜15年目に約200万円。蓄電池本体より寿命が短いため、20年保有ならほぼ一度は発生します
  • 撤去・廃棄費用──総投資額の5%前後を最終年度に計上するのが一般的な考え方です
  • セル・モジュールの一部交換──保証条件によります。何年目まで、容量何%までを保証するのかは契約書で確認すべき点です

当社がシミュレーションをお出しするときは、PCS交換と撤去費用を必ず入れています。入れないほうが数字は良く見えますが、20年持つ設備の計画で20年目までを見ないのは、計画とは言えないと考えています。

劣化は「年1.5〜2%」をどう織り込むか

もう一つ、年々効いてくるのが電池の劣化です。現在主流のLFP(リン酸鉄リチウム)で、年1.5〜2%程度の容量低下を見込むのが一般的です。

年2%で見ると、10年目には初期容量の約82%、20年目には約67%になります。放電できる量が減れば、売上もその分減ります。費用はほぼ横ばいなのに売上が逓減するという形になるので、後半の年度は手取りが薄くなっていきます。

ここで効いてくるのが、メーカーの容量保証です。「10年後に70%を保証」なのか「15年後に60%」なのか、保証を満たさなかったときに何をしてもらえるのか。機器選定の際には、価格と同じ重さで確認する価値があります。

費用を全部出したうえで、3つのシナリオをお出ししています

当社がネガティブ/スタンダード/ポジティブの3シナリオでシミュレーションをお出ししているのは、売上の振れ幅を示すためだけではありません。ここまで挙げた費用を全部引いたうえで、どのシナリオでも手取りがどうなるかをご自身で確かめていただくためです。

そして前提を全部開示しています。手数料率は何%で置いたか、PCS交換を何年目に何円で入れたか、劣化を年何%で見たか。開示されていない前提の上に乗った利回りは、検証のできない数字です。

掲載中の物件は販売物件一覧からご覧いただけます。すでに土地をお持ちで、そこに建てた場合の数字を知りたいというご相談も歓迎です。

※本記事の金額は当社が把握している市場相場の目安であり、個別物件の費用を示すものではありません。契約先・設備構成・立地により変動します。※固定資産税の評価方法・耐用年数の取扱いは設備構成によって見解が分かれる場合があります。税務の個別判断については税理士等の専門家にご確認ください。※アグリゲーター手数料の水準は公開情報に基づく目安で、特定事業者との契約条件を示すものではありません。※本記事の内容は掲載時点の情報に基づきます。制度・市場環境は変更される場合があります。

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