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「低圧分割は容認しない」。地権者の確認が1年から5年へ ── それでも複数基所有が否定されたわけではない理由

市場動向

10月7日、エネ庁の方針が報じられました

10月7日の電気新聞1面で、資源エネルギー庁が低圧の系統用蓄電池の「分割設置」を容認しない方針を固め、対策を実施する見通しだと報じられました。報道によれば、地権者の同一性を確認する期間を、現在の1年から申込みを行う年度から遡って5年に延長する案が示されています。

低圧の蓄電所をご検討中の方からすると、見出しだけ見れば不安になる話だと思います。実際、先週からお問い合わせの際に「低圧はもうだめなのか」とご質問をいただくようになりました。

結論から申し上げると、低圧そのものが否定されたのではなく、「一体の敷地を分けて低圧に見せる」行為が否定されたという話です。ここを混同すると判断を誤りますので、順を追って整理します。

そもそも「分割」とは何を指すのか

発電等設備の分割対策というルールは、2022年4月1日以降の申込みに適用されています。エネ庁が公開しているQ&Aでは、おおむね次のように定められています。

現行ルールで「分割」と判断される主な要件
  • 隣接または近接している場所に対して、同一の設置者が一般送配電事業者等に申込みをしている場合
  • 「同一の設置者」とは設置者名義が同一であること。ただし名義が形式的に異なっていても、事業用地を分割して計画していると思われる場合は実質的に同一とみなされることがある
  • 「同一の地権者」とは登記簿上の地権者名義が同一であること。こちらも同様に実質判断がある
  • 時期要件は、申込みを行う年度から遡って1年以内に登記簿上の地権者が同一であった場合

注目していただきたいのは、名義を分けただけでは回避できない仕組みになっているという点です。「分割して計画していると思われる場合」には実質的に同一とみなすという条項が、最初から入っています。

そして現行ルールには例外がありました。「異なる種類の発電等設備を接した場所に設置する場合」は分割に当たらないとされており、太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせる形がこれに該当してきました。今回の見直しは、この例外が蓄電池の低圧化のために使われている実態に向けられています。

何が変わる見通しなのか

報じられている対策の方向(制度改定前の報道ベース)
  • 地権者の同一性の確認期間を、申込年度から遡って1年 → 5年へ延長
  • 蓄電池については、異種設備の組み合わせによる分割を容認しない
  • 低圧は現在、接続検討を経ずに契約申込みへ直接進めるが、ここに接続検討プロセスを求めるかどうかも論点として挙げられている

1年から5年という延長が効いてくるのは、申込みの直前に分筆や名義分けをしておくという手法に対してです。5年遡られると、相当前から準備していなければ通らなくなります。逆に言えば、昇圧設備の費用を避けるために敷地を割って低圧を並べる、という組み立ては成り立ちにくくなります。

なお、これは報道と審議会の論点整理の段階であり、条文として確定したものではありません。適用開始時期も明示されていません。今後の制度資料で確定した段階で、改めてご案内します。

「複数基を持つ」ことは否定されていません

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。

当社は以前、低圧を複数基保有するという選択についてご案内しました(8月28日の記事)。今回の方針を受けて「あの話は無くなったのか」とご質問をいただきましたが、無くなっていません。対策の対象になっているのは、あくまで一体として扱うべき一つの敷地を、形式上分けて複数の低圧として申し込む行為です。

性質の違うふたつを、区別してください
  • 対策の対象になる──一体の土地を分筆・名義分けし、隣接させて複数の低圧を並べる。昇圧設備や保安規制を避ける目的が実質的に認められる
  • 対策の対象ではない──離れた別の場所にある、それぞれ独立した敷地に1基ずつ保有する。地権者も系統の接続点も別

複数の市場や地域にリスクを分散させたい、という考え方で別々の場所に複数基を持つこと。これは制度が問題視している行為とは別の話です。むしろ、今後は「どこに建っているか」が曖昧な物件ほど確認が厳しくなると考えるのが自然でしょう。

これから検討する方が確認すべき3つのこと

物件をご検討中の方は、価格や利回りの前に、次の3点を売主にご確認ください。これは当社の物件に対しても同じようにお尋ねいただいて構いません。

契約前の確認事項
  • ① 土地の分筆・名義変更の履歴──直近で分筆されていないか。されている場合、いつ、どういう経緯か。登記簿で確認できます
  • ② 隣接地・近接地の状況──隣の土地に同じ地権者の蓄電所や申込済み案件がないか
  • ③ 系統連系の進捗段階──契約申込みが受理済みか、まだ申込前か。ルールは申込時点の基準で適用されるため、ここで扱いが変わります

③は特に重要です。すでに契約申込みが受理されている案件と、これから申し込む案件では、適用されるルールが違います。「連系予定2027年春」と書かれていても、申込みが済んでいるのか、これからなのかで意味がまったく変わります。

数字で見ると、対策が入る理由は分かります

なぜ国が動いたのか。背景の数字を挙げておきます。

系統用蓄電池の申込み急増(資源エネルギー庁資料より)
  • 接続検討の申込件数──2022年度 約600件 → 2025年度 約2万5,000件(約42倍)
  • 契約申込件数──2022年度 約40件 → 2025年度 約3,900件
  • 2026年3月末時点の接続検討受付容量 約1億9,114万kW、契約申込受付 約3,500万kW に対し、連系済みは約84万kW

計画の総量と、実際に動いている設備の量が二桁違います。系統の枠を押さえたまま動かない計画が積み上がれば、本気で建てようとしている事業者の順番が後ろに回ります。規律が入ることは、実際に建てる側にとっては悪い話ではありません。

10月1日からは契約申込時に土地の使用権原を示す書類が必須になりました(9月24日の記事)。今回の分割対策も、同じ方向の流れの中にあります。土地と系統枠を実際に確保している案件が残り、形だけの計画が落ちていく。そういう整理が進んでいるとご理解いただくのが、いちばん実態に近いと思います。

当社がご案内するときにお伝えしていること

当社は不動産業の登録業者として土地の調査を日常的に行っています。物件をご案内する際には、登記簿上の地権者の履歴と隣接地の状況、そして系統連系手続きがどの段階にあるかを確認したうえでお出しします。ご質問いただければ、その根拠資料もお見せします。

制度が締まる局面では、情報の出し方で事業者の姿勢が分かります。都合の悪い論点に触れない説明を受けたときは、その理由をお尋ねになるのがよいと思います。

掲載中の物件は販売物件一覧からご覧いただけます。すでに他社でご検討中の物件について、第三者の目で確認してほしいというご相談も承っています。

※本記事の対策内容は2026年10月7日付の報道および審議会の論点整理に基づくもので、制度として確定したものではありません。適用時期・詳細な要件は今後の公表資料をご確認ください。※個別案件が分割に該当するかどうかの判断は、連系先の一般送配電事業者への確認が必要です。※本記事の内容は掲載時点の情報に基づきます。制度・市場環境は変更される場合があります。

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